解体が終わると、次は配線と配管です。
床に間取りの線が引かれ、電気の線と水の管が通っていきます。
そして、この工事の見た目はすぐに消えます。
床の下地が入れば、全部隠れてしまうからです。

隠れるということは、あとから触りにくいということでもあります。
この章は、床下に消える前に決めたことの記録です。
中古マンションを84㎡フルリノベーションして、5年住んでいます。
この章は、工事9日目と10日目(2021年2月18日〜19日)の記録です。
墨出し、給排水の配管、電気配線。地味ですが、あとで効いてくる工程でした。
墨出し:原寸大の間取り図を、床に直接引く作業
「墨出し」という作業があります。
床のコンクリートに、原寸大の間取り図を描く作業です。
といっても、描くのは主に壁が来る位置です。それ以外は床の下に隠れてしまうので。


どうやって線を引くのか、聞いてみました。
糸に墨を染み込ませて、ぴんと張って、指でパチンと弾く。
それだけで、コンクリートの上にまっすぐな線が残るそうです。
作業しているところを見たかったのですが、平日の昼間だったので見られませんでした。
墨出しの線がなければ、設計図どおりに作ることはできません。
この線を基準に、壁が立ち、配線が通り、設備が入ります。
現場に行って「あんまり変わっていないな」と思っても、その日にいちばん大事な作業が終わっていることがあります。
支柱で高さを調整して、傾斜をつけていました
配管屋さんが早めに来ていたので、少しだけ作業を見ることができました。
パイプスペースの中を縦に通る排水の大元の管。
そこにT字で接続されているのが、キッチンのシンクへ続く新しい管です。
途中に、管を支える金属の支柱のようなものが入っていました。
これが高さを調整できるようになっていて、排水管に傾斜をつけています。

傾斜は、あってもなくても困ります
傾斜がなさすぎると、うまく流れません。
傾斜をつけすぎると、その分だけ床を上げることになります。
床が上がれば、部屋の高さはその分削られます。
この「ちょうどいい」を出すのが、配管屋さんの仕事なんだと思いました。
トルテ第1章で「排水の分岐が床のすぐ上にあってよかった」と書きました。
この工程を見て、その意味がやっと分かりました。
分岐が低いところから始まれば、勾配をつける余裕がその分だけ残ります。


現場写真を読むための、色の見分け方
10日目に行くと、部屋じゅうに配線と配管が転がっていました。
まだ固定はされていません。だいたいの位置に置いてあるだけです。
このあと間仕切りと床・天井の下地を作るので、床下に来るものを先に通しているのだと思います。


色には、意味があります。
| 色 | 中身 |
|---|---|
| グレーの細い線 | 電気配線 |
| オレンジの管 | LANケーブル・電話線・空配管 |
| 青い管 | 水(冷水) |
| ピンクの管 | お湯(温水) |
| グレーの太い管 | 排水 |
これを知っていると、現場の写真が読めるようになります。
「あ、ここにお湯が来ているな」「ここはLANか」と分かると、見学がずっと面白くなりました。
色の使い方は、現場や業者によって違うことがあります。
気になったら、その場で聞いてみてください。 監督さんも職人さんも、聞けば教えてくれます。
天井から、配線が滝のように降りていました


墨出しの線の上にはもう木枠が立っていて、そこから電線や水・お湯の管が垂れ下がっていました。
本数が多くて、長さもバラバラで、無造作というか。
パイプと配線がグシャっとしている感じは、正直、嫌いではありませんでした。
ここから1本ずつ、コンセントや設備の位置へ割り振られていきます。
【当時のメモ|2021年2月19日】
電線や水・温水のパイプが滝のように天井から降ってきてる!
こうグシャっとパイプや配線があるのって
スチームパンク・インダストリアルパンク感あってなんかそそられません?嫌いじゃない。
天井の木枠は、どうやって固定しているのか
現場を見ていて、疑問に思ったことがありました。
天井はコンクリートです。そこに木枠がどうやって固定されているのか。
監督さんに聞いてみたら、高圧釘打機という道具を使うそうです。
コンプレッサーで空気を圧縮して、コンクリート用の釘を打ち込む。
昔はコンクリートに下穴を開けていたそうですが、この機械が出てからは下穴なしで一発で打ち込めるとのことでした。


空気圧で釘を打ち込むので、相当な音が出るそうです。
第1章で書いた玄関のコンクリート削りに続いて、この工程も近隣に響いています。
我が家はこのときは苦情がありませんでしたが、静かな工事ではないという前提で構えておいたほうがいいと思います。
床下に通すものは、あとから替えられません


オレンジの管の中には、LANケーブルと電話線が通ります。
ここで決めなければならなかったのが、LANケーブルの規格(カテゴリ)でした。
回線が速くても、ケーブルが遅ければ意味がありません
LANケーブルには規格があります。
大元の回線がどれだけ速くても、ケーブルの規格が低ければ、そこで頭打ちになります。
当時、我が家のマンションの回線は1Gbps。
この速度なら、CAT5eで足りていました。
| 規格 | 最大の通信速度 |
|---|---|
| CAT5e | 1Gbps |
| CAT6 | 1Gbps |
| CAT6A | 10Gbps ← 我が家はこれ |
| CAT7 / CAT8 | 10Gbps〜 |
足りているのに、ひとつ上を選びました
理由は、ひとつです。
床下に通したケーブルは、あとから替えるのが大変だからです。
替えるとなれば、業者を呼んで、床を開けることになります。
そしてケーブル自体の値段の差は、工事全体から見れば誤差のようなものでした。
回線は、あとから速くなることがあります。 我が家のマンションも、この年の夏に通信のアップグレードが予定されていました。
これは、この工事を通していちばん学んだ考え方かもしれません。
壁掛けテレビの配線でも、同じことをしました。空配管を入れてもらって、あとから通し替えられるようにしています。
いま必要な性能ではなく、「替えるときの手間」で決める。
床の下と壁の中は、そういう場所です。


我が家は、電力会社を選べません
これは、反省として書いておきます。
我が家のマンションは一括受電システムで、電力会社を選ぶことができません。
インターネットの回線も固定です。
料金自体は安いので、いまも大きな不満はありません。
ただ、「選べない」ということを知ったのは、買ったあとでした。
一括受電のマンションでは、電力会社を自分で選べません。
新電力への切り替えも、電力会社の乗り換えキャンペーンも、対象外になります。
インターネットの回線が指定されていることもあります。
これは、物件を買う前にしか確認できません。
我が家は、事前に確認していませんでした。いまのところ困ってはいませんが、知らずに買ったのは事実です。


床と壁がふさがると、手が出せなくなります


この工程が終わると、床の下地が入ります。
そこから先は、床を開けない限り、配線にも配管にも触れません。
| 決まってしまうもの | あとから困ること |
|---|---|
| コンセントの位置と数 | 足りないと、延長コードが増えます |
| LANケーブルの規格 | 床下を通すので、替えるのは大変です |
| 空配管を入れるかどうか | 入れておけば、あとから配線を通せます |
| 排水の勾配 | つけすぎると床が上がり、部屋が低くなります |
| 水とお湯の取り出し位置 | 設備の配置が変わると、やり直しになります |
コンセントについては、別の記事に詳しく書きました。
数と位置は、住んでから後悔する人がいちばん多いところだと思っています。


続きはこちらです


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