中古マンションを買って、部屋を全部壊しました。
84㎡のスケルトンリノベーション。壁も、床も、天井も、設備も、いったん全部取り払います。
解体は、6日で終わりました。
思っていたよりずっと速い。

そして、壊してみて初めて分かったことがいくつもありました。
躯体の状態。排水管の位置。断熱材の厚み。
どれも、図面にも内見にも出てこない部分です。
中古マンションを84㎡フルリノベーションして、5年住んでいます。
この章は、工事1日目から6日目まで(2021年2月10日〜13日)の記録です。
当時、その日のうちに書いた記事を、5年後の視点でまとめ直しました。
写真は、すべて当時撮ったものです。
1日目:まず、共用部を養生します
壊す前に、廊下とエレベーターを守ります
マンションに住んでいるのは、自分たちだけではありません。
工事の前に、共用部が汚れたり傷ついたりしないよう、養生をします。
廊下に敷物を敷き、エレベーターにプラスチック板を貼る。
簡易的なものですが、これでかなり違うそうです。


初日の夜に行ったら、もう壁がなくなっていました
1日目は仕事帰りに立ち寄ったので、作業しているところは見られませんでした。
でも、部屋に入ったらもう床はコンクリートがむき出しでした。
前のオーナーさんもリノベーションをしていたようで、少し曲面の出た特徴的な壁がありました。それが、初日で消えていました。


床には、バールが落ちていました。
温水の赤いパイプと、水の青いパイプ。この2本は、色で見分けられるようになっています。

床には、バールが落ちていました。
温水の赤いパイプと、水の青いパイプ。この2本は、色で見分けられるようになっています。
【当時のメモ|2021年2月10日】
これぞまさしく名状しがたいバールのようなもの!!
一度は言ってみたいセリフランキング上位をリアルに呟けたのは感動です。
🔴 現場に行くときは、必ず連絡してから
翌日、監督から強く言われました
初日、私は連絡せずに現場へ行きました。
これは、やってはいけないことでした。
床には釘や金属片が転がっています。資材のゴミもあちこちに散乱しています。
翌日、現場監督さんから「見学するときは、必ず連絡をください」と、はっきり言われました。
作業していない時間でも、危険なものが床に残っています。
そして、施主が怪我をしたときの責任の所在も、はっきりしません。
見に行きたい気持ちはよく分かります。私もそうでした。
でも、必ず一報を入れてから行ってください。
連絡しておけば、監督さんが説明してくれることもあります。そのほうが、得るものも多いです。
3日目:ほぼ丸裸になりました
ユニットバスは、切って運び出していました
3日目は、前オーナーさんが付けていたエアコンの取り外しに立ち会う日でした。
そのついでに、解体の様子も見せてもらいました。



壁も設備も、ほとんど壊されていました。
いちばん厄介そうだったのが、ユニットバスです。
浴槽は玄関より大きいので、そのままでは運び出せません。
刃が前後に高速で動く電動の工具で、バスタブを切って搬出していました。
このときは、かなり大きな音が出ていました。
トルテ動画を撮っておけばよかったと、いまでも思っています。
エアコンの取り外しも、写真を撮り忘れました。
滅多に見られない作業なので、記録しておけばよかったです。
図面にも、内見にも出てこない部分でした


① 天井の躯体が、きれいでした
天井は最初から「躯体現し(コンクリートをそのまま見せる)」にする計画でした。
開けてみると、凸凹もひび割れも少なく、状態がよかった。
現場監督さんからも「ここの躯体、かなりいいですね」と言われました。
このままでもいいのでは、と思ったくらいです。


② 🔴 排水管の分岐が、床のすぐ上にありました
これが、いちばん実用的な発見でした。
パイプスペースの壁を取り払うと、排水の縦管が見えます。
そこから、キッチンへ向かう横引きの管が分岐しています。
我が家は、この分岐が床の躯体のすぐ上にありました。


なぜこれが大事なのか。
排水は、勾配をつけて流します。
分岐が高い位置にあると、その分だけ床板を上げなければなりません。
床が上がれば、天井までの高さは、その分だけ削られます。
つまり——分岐が低いほど、部屋を高くとれます。


内見では、パイプスペースの中は見えません。
図面にも、分岐の高さまでは書かれていないことがほとんどです。
中古マンションをスケルトンでリノベーションする場合、ここは「開けてからのお楽しみ」になります。
我が家は、たまたま良いほうでした。
③ 断熱材が、3cm以上ありました
窓のまわりには、断熱用のウレタンフォームが吹き付けられていました。
現場で押しピンを刺して厚みを測ったところ、3cm以上ありました。
天井の分は削り取り、壁側はそのまま再利用しています。
前のオーナーさんが、北側の窓際の寒さ対策として入れたものだと思われます。


④ 隠ぺい配管の中身が見えました
隠ぺい配管とは、エアコンの配管を壁や天井の中に通して、部屋から見えないようにする方法です。
見た目はすっきりしますが、隠すための梁ができるので、そこが出っ張ります。
壊してみると、中には断熱用のウレタンフォームが詰まっていました。


⑤ 天井に、緑と黄色のポッチがありました
天井のあちこちに、緑や黄色の小さなポッチが付いていました。


あとからネジをコンクリートに打ち込んでしまわないよう、あらかじめ入っているもののようです。
3日目の時点では気づいていませんでしたが、6日目によく見たら——
これが、地味に目立つ。
躯体をそのまま見せるつもりでしたが、このポッチを見て、白く塗る決心がつきました。



最近はグレーの目立たないものが使われているそうですが、我が家のは自己主張の強い緑と黄色でした。
おかげで、迷わずに済みました。
古いエアコンは、売れることがあります
処分の見積もりは3〜4万円。売ったら500円になりました


リノベ会社に処分をお願いすることもできますが、家電リサイクル費用と撤去で3〜4万円かかると言われました。
設計士さんから「型式が新しければ買い取ってくれる業者もある」と教えてもらったので、調べてみることにしました。
10社に見積もりを出しました
廃棄予定のエアコンは2007年製。当時で14年落ちです。
正直、期待はしていませんでした。実際、ほとんどの会社からは断られました。
「こんな古いのは買い取れません」
「むしろ処分費として1万円いただきます」
1万円ならもう仕方ないか、と諦めかけていたところで、1社だけ違う返事がありました。
「500円でよければ買います」
追加費用も要らないとのことでした。解体を見学した3日目に撤去してもらい、本当に500円で売れました。
差し引きすると、4万円ぶん変わったことになります。
古いから無理だろう、と決めつけずに、何社かに聞いてみる価値はあると思います。
我が家は10社に問い合わせて、買い取ってくれたのは1社だけでした。
なお、これは2021年の話です。 いまも同じ条件とは限りませんし、機種や状態によっても変わります。
6日目:瓦礫が消えて、着工式でした
部屋がきれいになっていました
3日目には足の踏み場もないほど瓦礫が散乱していましたが、6日目に行くときれいに掃除されていました。
それだけでなく、下地に使う板や角材がもう搬入されていました。




搬入されていた板は、パーティクルボードというものでした。
木材の小片を接着剤で固めた材料で、硬くて変形しにくく、断熱性と遮音性があります。廃材を使うので価格も抑えられ、床の下地材によく使われるそうです。
🔴 玄関のコンクリートを削った日、苦情が1件
音と振動は、思っている以上に伝わります
玄関を入ってすぐのところが、コンクリートで一段高くなっていました。
そのままだと部屋の角に当たってしまうので、少し削ることになりました。
コンクリートを壊すときは、音も振動も、けた違いです。
このとき、1階のエントランスまでドリルの音が聞こえ、マンション全体が振動していたそうです。


「うるさいぞ」というお叱りが、1件あったと監督から聞きました。
監督は「1件で済んでよかった」と言っていましたが、私は申し訳ない気持ちでした。
引っ越しの挨拶のときに、改めてお詫びをしました。
工事中は、施主がその場にいません。
でも、迷惑をかけているのは自分の工事です。あとで一言添えるだけで、その後の関係が変わります。
着工式って、何をするんでしょうか
6日目は着工式でした。
正直、何をするのか知りませんでした。 お神酒でも飲むのかな、くらいに思っていました。
調べてみると、着工式(起工式)とは「建物の工事を着工するにあたり、施主や施工者、工事関係者などが参加して行われる式典」とありました。
なるほど、安全を祈る儀式か。
出席したのは、設計士さん、現場監督、私たち夫婦の4人。
2021年2月、緊急事態宣言の最中だったので、人数は絞られていたのだと思います。
着工式って、何をするんでしょうか
6日目は着工式でした。
正直、何をするのか知りませんでした。 お神酒でも飲むのかな、くらいに思っていました。
調べてみると、着工式(起工式)とは「建物の工事を着工するにあたり、施主や施工者、工事関係者などが参加して行われる式典」とありました。
なるほど、安全を祈る儀式か。
出席したのは、設計士さん、現場監督、私たち夫婦の4人。
2021年2月、緊急事態宣言の最中だったので、人数は絞られていたのだと思います。
設計士さんが取り出したのは、油性マジックでした
簡単な挨拶が済んだあと、設計士さんがカバンから太い油性マジックを取り出して、こう言いました。
「せっかくなので、隠れてしまう壁に落書きしましょう」
満面の笑みでした。



ちょっと待ってください。いま落書きって言いました?
着工式って、もっと神聖なものじゃないんですか?
書きました。
普段メモに使っているサインと、日付。
壁の下地が入れば、二度と見えなくなる場所です。
宮大工が自分の仕事を残すために墨壺を梁の上に置いていった、という話を思い出しました。私は何も作業していないのですが。
正直、かなり気持ちよかったです。
これからスケルトンリノベをする方は、サインの練習をしておいてください。


監督が、床に間取りを貼ってくれました
意味がないと分かっていて、貼ってくれたのだと思います
私たちが壁にサインを書いているあいだ、現場監督さんが床に養生テープを貼りはじめました。
間取り図のとおりに、部屋の輪郭を床に貼っていたんです。
「電気工事屋さんが先走らないように」と言っていましたが、来週には墨出し(床に図面を正確に書く作業)をやる予定でした。
つまり、この養生テープはほとんど意味がありません。
間取り図を見ても、実際の広さはなかなか想像できません。
でも、床に線が引いてあれば、そこに立って歩けます。
「ここがキッチンで、ここがリビングか」と、その場で分かります。
頼んでいないのに、そこまでしてくれた。
この現場監督さんに任せてよかったと、このとき思いました。


5年たって、思うこと
我が家は、運が良かっただけかもしれません
躯体の状態がよかった。排水管の分岐が低かった。断熱材が入っていた。
当時の記事には「私たちは運がいい!」と何度も書いていました。
5年たったいまも、その感想は変わりません。
でも、いま書くならもう一言添えます。
逆のこともあり得ます。


躯体にひびが多いかもしれない。
排水管の分岐が高くて、床を上げることになるかもしれない。
断熱材が入っていないかもしれない。
中古マンションをスケルトンでリノベーションするということは、これを引き受けるということでもあります。
我が家は、たまたま良いほうに転びました。
「運が良かった」と書けるのは、良かったからです。
それでも、この工事をやってよかったと思っています。
壊さなければ、この家のことを何も知らないまま住んでいました。
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