- できない理由は、ほぼ1つに集約されるという話
- さわれない/物件による/自由にできる の3分類
- 見落としやすい5つの制約
- 水まわりをどこまで動かせるかの考え方
- 誰に、何を、いつ聞くか
こんにちは。中古マンションを買ってフルスケルトンリノベし、5年暮らしているトルテです。
マンションのリノベーションを調べていると、必ずこの不安にぶつかります。
「思ったとおりにできなかったら、どうしよう」
トルテ先に結論です。
「できない」の理由は、ほとんど1つしかありません。それが共用部分だから。
自分の部屋の内側は、かなり自由にできます。でも建物としてみんなで使っている部分には、手を出せません。この線引きさえ分かれば、大半は整理できます。
大原則:専有部分と共用部分
マンションには、「専有部分」と「共用部分」という区分があります。
- 専有部分 … 自分が所有している、住戸の内側
- 共用部分 … 建物全体で共有している部分
リノベーションで手を入れられるのは、基本的に専有部分だけです。
そして厄介なのが、「自分の家の一部に見えるのに、実は共用部分」というものが、いくつもあることです。
できる・できないは、3つに分かれます


① さわれない(共用部分)
| 部位 | 補足 |
|---|---|
| 外壁・柱・梁・床スラブ | 建物を支えている躯体そのもの |
| 窓ガラス・サッシ・網戸 | 意外に思う方が多い部分。室内から見えていても共用です |
| 玄関ドア | 外側は共用。内側の面だけ塗装できるケースもあります |
| バルコニー・専用庭 | 共用部分を専用で使わせてもらっている扱い |
| 配管の縦管(パイプスペース) | 上下階を貫いている管。動かせません |
② 物件による(管理規約しだい)
| 項目 | どう決まるか |
|---|---|
| 床材の種類 | 遮音の等級が指定されていることが多い |
| 水まわりを動かせる範囲 | 床下の高さと配管の位置で決まる |
| 電気の容量 | 建物全体の容量から割り当てられている |
| エアコンの設置位置 | 室外機置き場・スリーブ(穴)の位置に依存 |
| 床暖房・二重サッシ | 規約で不可の場合あり |
③ 自由にできる(専有部分)
- 間仕切り壁(構造壁を除く)
- 床・壁・天井の仕上げ
- キッチン・浴室・洗面・トイレなどの設備
- 建具(室内ドア・室内窓)
- 照明・コンセントの配置



迷ったときは、「それは自分の部屋の内側か?」で考えてみてください。
窓は室内から見えるので自分のもののように感じますが、外から見れば建物の一部です。だから共用。この感覚で、だいたい合っています。


見落としやすい、5つの制約
ここからが実務です。知らずに計画を進めて、あとで詰まりやすいのはこの5つでした。


① 床材に、遮音の規定がある
マンションでは、床の遮音性能について管理規約で基準が定められていることが一般的です。「LL-45相当以上」といった書き方をされます。
これが効いてくるのは、無垢フローリングを入れたいときです。無垢材は遮音性能の証明が取りにくく、物件によっては選べないことがあります。
我が家は無垢フローリングを入れています。5年経ったいまも、これは選んでよかったと思っています。ただ、すべてのマンションでできるわけではありません。無垢床が譲れない条件なら、物件を決める前に規約を確認してください。


② 水まわりを動かせる距離には限りがある
これは次の章でくわしく書きます。排水は勾配で流れるので、動かせる範囲は物理的に決まります。
③ 電気の容量は、建物側で決まっている
「アンペアを上げればいい」と思いがちですが、上げられる上限は建物全体の容量から決まります。
とくにIHクッキングヒーター・食洗機・エアコン複数台を予定しているなら、早めに確認してください。あとから「容量が足りません」と言われると、設備の選び直しになります。


④ 抜けない壁がある
間取りを変えるうえで、いちばん大きいのがこれです。
- ラーメン構造(柱と梁で支える)… 室内の壁は比較的動かしやすい
- 壁式構造(壁で支える)… 壁そのものが構造。抜けない壁が多くなります
見た目は普通の間仕切りでも、構造壁なら動かせません。ここは図面と現地を見ないと判断できないので、リノベ会社に確認してください。
⑤ 窓・サッシは変えられない
断熱を考えるとき、いちばん効くのは窓です。ところが窓とサッシは共用部分なので、勝手に交換できません。
打ち手としては内窓(二重サッシ)を室内側に足す方法がありますが、これも規約で不可の場合があります。断熱を重視するなら、ここは必ず確認してください。
水まわりは、どこまで動かせるか
「キッチンを窓際に移したい」「浴室の位置を変えたい」——よくある希望です。できる場合もありますが、条件があります。


排水は、ポンプではなく勾配(傾き)で流れています。だから、水まわりを縦管(パイプスペース:PS)から遠ざけるほど、その距離のぶんだけ配管を高い位置から始める必要があります。
つまり——床下に余裕がないと、動かせません。
リノベで床を上げる(二重床にする)のは、デザインの都合だけではありません。配管を通すスペースを確保するためでもあります。
ただし床を上げれば、そのぶん天井までの高さは低くなります。ここはトレードオフです。
床下の余裕がどれくらいあるかは、物件によってまったく違います。 図面だけでは分からないことも多く、現地を見た専門家でないと判断できません。
「水まわりを大きく動かしたい」という希望が最初からあるなら、物件を決める前にリノベ会社に見てもらうのが確実です。
誰に、何を聞けばいいのか
制約は分かった。では、どう確認するか。順番があります。


管理規約・長期修繕計画・総会議事録を見せてもらいます。申し込み前で問題ありません。 遠慮する必要のない質問です。
見るのは4点。床材の遮音規定/水まわりの移動/窓・サッシの扱い/工事の届出ルール。全部読まなくて大丈夫です。
構造・床下の高さ・電気容量。 ここは素人には判断できません。買う前に見てもらってください。
規約に書かれていないことが、運用で決まっている場合があります。工事の時間帯、搬入経路、近隣への周知など。
いちばん多い失敗が、物件を買ってからリノベ会社を探すという順番です。
これをやると、「この物件では、やりたかったことができません」と言われる可能性が残ります。そして物件は、もう買ってしまっています。
物件探しとリノベ会社探しは、同時に進めるのが安全です。 会社によっては、内見に同行して構造や配管を見てくれます。




我が家が、あとから気づいた制約
正直な話も書いておきます。
我が家は、電力会社を自由に選びづらい物件でした。これは購入時点で完全に把握できていたわけではありません。
暮らしに支障はありませんし、それでこの物件を選んだことを後悔してはいません。立地も広さも管理状態も、優先したかった条件を満たしていたからです。
ただ——知って選ぶのと、知らずに買うのは違います。



制約があること自体は、問題ではありません。
問題なのは、引き渡しのあとに気づくことです。そのときにはもう、選択肢が残っていません。


制約を知ると、物件探しはむしろ速くなる
最後に、前向きな話を。
「できないことが多い」と聞くと、気が重くなるかもしれません。でも実際には逆でした。
できない理由が分かると、見るべき物件を絞り込めます。
- 無垢床が譲れない → 規約を先に確認する物件だけ見る
- 大きなLDKにしたい → 壁式構造の物件は候補から外す
- キッチンを大きく動かしたい → 床下に余裕のある物件を探す
条件が具体的になると、物件情報を見る速度が上がります。「なんとなく良さそう」で内見を重ねるより、はるかに効率的でした。


よくある質問
- 管理規約は、いつ見せてもらえますか?
-
申し込み前に依頼して問題ありません。 仲介会社に「管理規約を確認したい」と伝えてください。重要事項説明でも触れられますが、それは契約直前なので、判断材料としては遅すぎます。
- 壁を抜けるかどうかは、図面で分かりますか?
-
図面である程度は推測できますが、断定はできません。 構造図があれば手がかりになります。最終的には、現地を見た専門家の判断が必要です。
- リノベ済み物件を買う場合も、同じ制約がありますか?
-
建物としての制約は同じです。 ただし工事はすでに終わっているので、あなたが判断する場面はありません。逆に言えば、どういう制約の中でその形になったのかは分かりません。
- 賃貸マンションでもリノベできますか?
-
原則としてできません。 所有者ではないためです。原状回復が前提の範囲(貼ってはがせる壁紙など)にとどまります。
- 築年数が古いほど、制約は多いですか?
-
一概には言えません。 古い建物は床下の余裕が少ない傾向がある一方、規約が緩い場合もあります。新しいほど規約が細かいこともあります。 築年数だけでは判断できません。
- 天井は高くできますか?
-
物件によります。 天井裏に配管やダクトがあると、そのぶん下がります。躯体を現しにして高さを稼ぐ方法もありますが、断熱や設備の取り回しとセットで考える必要があります。
まとめ


- 境目は「専有部分かどうか」。 部屋の内側は自由、外まわりは共用です
- 窓・サッシ・玄関ドアは変えられない。 断熱の打ち手は内窓が使えるかで変わります
- 床材には遮音の規定があることが多い。 無垢床を入れたいなら最優先で確認を
- 水まわりは床下の高さしだい。 縦管から離すほど床を上げる必要が出ます
- 抜けない壁がある。 壁式構造では間取りの自由度が下がります
- 確認は申し込み前に。 引き渡し後だと、計画ごと作り直しです
マンションのリノベーションには、確かに制約があります。でもそれは「不自由」ではなく「条件」です。
条件が分かっていれば、その中でできる最善を選べます。我が家も、制約のある物件で、満足のいく家をつくれました。
先に知っておく。 それだけで、避けられる後悔がかなりあります。
あわせて読みたい(内部リンク)














